塩の話
塩の話です。もうずいぶん前ですが『艸の作り方』の中で「あんばい」っていうタイトルで塩についてちょこっと書いたことがあります。
その「あんばい」では、料理人にとって塩は永遠のテーマなんです、みたいなことをいっちょまえに書いたりしているのですが、そういえば塩そのものについて調べたりしたことがないなーと思いまして。
で、塩についてちょこちょこっと調べてみると、塩ひとつでも随分知らないことがあるんだなーと。そんなわけで塩について簡単なまとめです。
塩の作り方にはいくつかの方法があります。
①海水を汲み上げて火にかけて水分を蒸発させる方法
②海水を太陽と風の力だけで水分を蒸発させて塩分の濃い海水にして塩を結晶化させる方法
③岩塩を削る方法
④岩塩を水で溶かし濃い塩水を取り、火にかける方法
⑤イオン交換膜を使って製塩する方法
大雑把に言ってだいたいこんな感じに分かれます。
日本は海に囲まれた島国なのでずっと①の方法で塩を作っていました。艸も塩を作るとしたらこの方法しか思いつきません。
②は説明のまんまですが、自然の力だけで海水の水分を蒸発させて、もうこれ以上塩が水の中で溶けていられないくらいの濃度になって塩が結晶化するというもので、有名なゲランドの塩などはこの方法で作られている正真正銘の天日塩です。日本のような雨の多いところではこの方法で塩を作ることはできません。
③の岩塩というのは塩の化石と言いましょうか、何万年、何億年という長い長い年月をかけて昔の海水が結晶化した岩塩層を削り採った自然塩のことです。
「艸の作り方」の中でも「仕上げに岩塩をパラパラ振って・・・」と書いたりしていますが、艸が使っているのは海水から作られている塩なので正しくは岩塩ではありません。でも、なんか結晶状のツブツブ塩を岩塩って呼んじゃうクセがついちゃってますね・・・f^_^;)
それともうひとつ、岩塩ってなんかミネラルたっぷりなイメージがあります。でも実は、岩塩ができるまでの長い年月のうちに大半のミネラルは抜けてしまうのだそうです。なので岩塩自体にはミネラルはほとんど含まれていません。
④は③の岩塩に水を注入して濃い食塩水を取り、水分を蒸発させて作ります。欧米で広く食用の塩として使われているのはこの方法で作られた塩です。精製塩に近いです。
⑤はイオン交換膜を使って海水の塩分濃度を濃くし、水分を蒸発させる方法です。 何のことやら分からないですね~。艸のつたない言葉で説明するともっとこんがらがるので、とっても解りやすいこちらのサイトの図と説明をご覧ください。
このイオン交換膜を使う方法で作られる塩はいわゆる精製塩と呼ばれるもので、99.5%以上が塩化ナトリウムです。99.5%以上が塩化ナトリウムですから、ミネラルは当然ほとんどありません。スーパーにある「食塩」と書かれてるあれがこれです。
とまあ、こんな感じで世の中のお塩は作られています。あ、あと塩湖から採掘したりというのもありますね。日本には塩湖とか岩塩の層というのはないので、いまいちピンときませんが、世界で消費されている塩の3分の2は、岩塩から作られているのだそうです。
仕上げに振ったりするパラパラお塩が、岩塩でないことは薄々気が付いてはいました。でも、なんて呼べばいいんでしょうねー。パラパラ塩?ガリガリ塩?塩の結晶?うーん・・・それと、岩塩自体にミネラルが含まれていないというのは、「えっ?そうなの?」という感じです。艸は長いこと勘違いをしていました。ミネラル分を添加した岩塩や鉱物が入っている岩塩とかはあるみたいですが。
「えっ?そうなの?」つながりでもう一つ。
ご存知のように日本の塩は長いこと専売制でした。1905年に塩の専売制が始まりました。塩の流通から販売までを国の管理下において、その利益は国ががっぽりもってくよ、ってのが専売制です。1904年に始まった日露戦争の戦費を調達するために塩の専売制が始まったんですね~。
さらにさらに、「塩業近代化臨時措置法」という法律が1971年にできまして⑤のイオン交換膜法でしか塩を作ってはいけないことになりました。もちろん塩を勝手に輸入したり販売したりすることもダメです。なので、ミネラルの入っていない精製塩しかほとんど流通していなかったことになります。
その後も国内の製塩業の育成、海外からの価格の安い塩から守るという趣旨で塩の専売制は長いこと続きました。塩の専売制が廃止されたのは1997年です。92年 も続いてたんですね〜。そしてそして、塩の製造・販売が自由化されたのは2002年ですから、いやほんとつい最近までゲランドの塩のような海外からの塩を普通に買うことすらできなかったんですね。
艸がモリモリご飯を食べて育っていた頃に使われていた塩にはミネラルは全く入ってなかったということになります・・・・・えっ?そうなの?^_^。一部では再生自然塩と呼ばれるミネラルを加えているものもあったみたいですが。
塩って調べてみると、面白いですね〜いろんな「へ〜〜〜」があります。今回は艸の「えっ?そうなの?」を中心に取り上げて書いてみました。